読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

目を欺くアート

精巧な捏造作品

4月28日まで外苑前にあるMAHO KUBOTA GALLERYにて多田圭佑の個展「FORGE」が開催されている。若手作家である多田圭佑にとって初めての本格個展だそうだが作品はかなりの完成度と面白さで驚かされる。作品は古い板の上に大胆に絵の具の大きなストロークで描かれていたり塊のようなものがへばりついていたりなのだが、話を聞けば作品が描かれている古い板も精巧に作られた作品なのだという。つまり作品の土台と思わせるものも作られた作品であり全ては精巧な捏造作品なのだ。

近くで見ても分からない

それにしてもこの精巧な捏造作品は凄いテクニックによって実現されているので驚くばかりだ。土台の古い板は傷があったりネジで留てあったりするのだが近くで見てもそれが作られた作品だとは到底思えないリアルさなのである。「FORGE」という展覧会タイトルは「捏造」というような意味があるそうだがなるほどこの捏造にはまんまと騙された。ここまでしてこう行った作品を作り上げる作家の情熱は凄いものがあると思う。是非自身の目でこの素晴らしい捏造作品をご覧頂きたい。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170329180750j:plain

大胆な絵の具のストロークと土台の板も全ては作品だ。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170329180837j:plain

この焼けたような板の質感もへばりついた塊も作品。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170329180918j:plain

まるで自然に着いたような汚れも全て作品というから驚く。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170329181001j:plain

木目やネジの質感なども近くで見ても偽物とは分からない。

絵にパンチ炸裂!

パンチから産まれる絵画

4月22日まで天王洲にある山本現代ギャラリーにて篠原有司男の個展「我輩の絵にパンチが炸裂!」が開催されている。作品展ではあるがどちらかというと「ギューちゃん」こと篠原有司男氏の体をはった制作アクションの軌跡を展示しているような感じでもある。だが、もちろん抽象絵画の作品としてそれらには唯一無二の存在感を放ちながら迫って来るような迫力である。

1969年からニューヨークを拠点に

85歳になっても体で芸術を表現し続ける篠原有司男という作家は本当に凄い人である。今回も初日にご本人によるボクシング・ペインティング・パフォーマンスが開催された。1950年代、東京藝術大学在籍中にアンデパンダン展に参加、その後も前衛グループ「ネオ・ダダイズム・オーガナイザーズ」の一員として常識を覆すような作品制作を行って来た。1969年、ニューヨークに拠点を移してからも精力的に独自の作家人生を歩んで来たもはや伝説のアーティストなのである。炸裂するアートのパワーに元気をもらいに是非見に行って欲しい展覧会だ。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170328190836j:plain

パンチ炸裂の跡、色も良い感じだ。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170328190911j:plain

かなりの連打で制作している。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170328190939j:plain

こちらの凄い連打は色彩が淋派を思わせる。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170328191240j:plain

絵の上に更に連打を重ねた作品。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170328191303j:plain

シンプルだがインパクトのある作品。

クールで熱いアート

既存品からインスピレーション

318日より4月15日まで白金の児玉画廊で大谷透「planet」展が開催されている。以前から彼の作品は児玉画廊のグループ展で見て来て面白いなと思っていたが、今回は東京で初めての個展となっている。彼の作品はサンドペーパーの裏や石膏ボードの裏のメーカーのブランドマークや記号などを制作を進めるインスピレーションとし、それらを塗りつぶしたり塗り残すことによって全く新しい作品に仕上げて行く。

 

色鉛筆にこだわる

その制作においては絵の具で塗りつぶすのではなく色鉛筆で描き進めるのが特徴的だ。平面など色鉛筆で塗りつぶすのはかなりの作業だが作家にとってはこの作業が制作過程にとって必要なのだ。時間をかけて丹念に色を塗り進めながらどこを塗りつぶしたいのか、またどこを残したいのかなどの閃きを得つつ作品は出来上がって行くのだという。レディーメイドに手を加えてアートに仕上げるというスタイルは一見コンセプチャルでクールでありつつ、その制作方法と成し遂げる意欲には情熱を感じる。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170326191903j:plain

サンドペーパーの質感も感じる。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170326191923j:plain

未来的?な記号の不思議な絵。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170326191948j:plain

色彩感覚が素晴らしく良いと思う。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170326192030j:plain

最終的にヘビのようなものが現れた。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170326192106j:plain

この大きな作品は石膏ボードの裏面。

 

椿のフィールド

金近さんのギャラリーで

小山登美夫ギャラリーで長年務めてた金近さんが独立して遂にギャラリーをオープンした。

今回、天王洲のギャラリーコンプレックスビル5階にオープンしたKOSAKU KANECHIKAギャラリーとSCAI THE BATHHOUSE。これによって3階に既にある山本現代,URANO、児玉画廊、Yuka Tsuruno Galleryと併せるとますます見ごたえのあるギャラリーコンプレックスとなってこれからも楽しみである。

 

第1回目は館鼻則孝

さて、そのKOSAKU KANECHIKAギャラリーの記念すべき第一回目の展覧会は話題の作家でもある館鼻則孝さんだ。大学の卒業記念で制作した「ヒールレスシューズ」がレディーガガの目にとまり専属のシューメーカーになり話題となった館鼻則孝さんだが、日本の歴史や仏教の世界観、生と死という普遍的なテーマを作品に込めて制作をする期待の若手作家だ。今回,岡本太郎記念館での個展も無事に成功させてますます勢いに乗っている彼の作品世界を十分に堪能出来る展示となっている。

 

椿の儚さと潔さ

「CAMELLIA FIELDS」と題されたこの展覧会のメイン作品は床に丸く敷き詰められた椿の花である。椿という花は花弁もそのままに落ちることから潔さの象徴として武士に好まれたともいう。確かにその花は散るというよりも花ごと落ちる感じであり椿の木の下にはまさに作品と同じように椿の花が散りばめられたようになるのだ。これらの椿は実は鋳物で一つづつ手で彩色されているのだそうだが見た感じの質感が木に彩色したようだったので鋳物と聞いて驚いた。展覧会は4月28日までなので是非足を運んでみてください。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170324171000j:plain

レディーガガが惚れたハイヒール

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170324171032j:plain

平面作品も手が込んでいる。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170324171104j:plain

巨大なオブジェも手で磨き上げた。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170324171135j:plain

岡本太郎での作品も特別展示。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170324171205j:plain

丸く広がる椿のフィールド。

荒く有機的な陶芸

日本初の個展

4月3日まで渋谷ヒカリエ小山登美夫ギャラリーにてフェルナンド・カサンペーレ展「痕跡ー記憶」が開催されている。ロンドンに拠点を置き制作活動を続けるチリ出身のアーティストの日本初の個展だそうである。陶芸の可能性を追求するような有機的なフォルムの陶芸作品は大自然のように美しくその存在感は圧倒的だ。また、流れるようなマーブル模様の独特の彫刻には亀裂や空洞といったものが含まれ特徴的な作品となっている。

 

ロンドンに暮らして

チリのサンティアゴに生まれ育った作家はプレ・コロンビア期の美術工芸や遺構に魅了され、それらを現代アートの文脈で再解釈し新しい造形へと発展させて来た。チリでは銅の鉱山での過剰な採掘によって鉱山が荒廃するなどの深刻な問題があるが、環境問題にも強い関心があ作家はロンドンにいるにもかかわらず採掘後に破棄された母国チリの土を使って作品制作をしている。母国よりもひらかれたロンドンの環境に暮らすことでラテンアメリカの芸術や要素を論理的かつ多角的に捉えて作家活動が出来るのだという。一見荒々しく、しかしその奥に深い美しさを秘めた作品にはじっくりと向き合うことをお勧めしたい。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170322174945j:plain

重く存在感を示しながらそこに存在する作品は圧倒的パワーである。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170322175044j:plain

作品が置かれた台座にもかなりこだわっているように見える。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170322175116j:plain

ギャラリー内に配された作品の佇まいには和石庭のような趣さえある。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170322175212j:plain

白い箱形の作品の中には骨のような作品が沢山詰まっていた。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170322175309j:plain

壁に張り付いた自然の土に描かれた太古の絵のような陶芸作品だ。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170322175347j:plain

白い表面に走る無数の亀裂は自然の美しさを凝縮したようでもある。

Holy Cow !!

驚きの作家

415日まで六本木のTaka Ishiiギャラリーにて五木田智央の展覧会「Holy Cow」が開催されている。5年振り3度目の個展では新作ペインティング15点が1階と3階にて展示されている。展覧会のタイトル「Holy Cow」は英語でビックリした時の言葉であるが五木田智央の作品と近年の彼の世界的な高い評価はまさに驚くべきものだ。

 

不気味な魅力

五木田智央は以前から気になる作家であった。アメリカやメキシコのプロレス、ポルノ雑誌など古い写真やアルバムなどからインスピレーションを受けた作品はいつも独自のグラデーションを特長とするブラシストロークとコントラストが強調された作風で他にはない独自の世界を展開して来た。近年、白と黒、そしてグレーのグラデーションのみによって表現される彼の絵画世界は不気味な魅力を放っており見るものを不安にさせるようなパワーを持っていると思う。

 

海外でも高い評価

近年、海外で高い評価を受けたことは彼の独特な絵画世界が外国人の感性にも突き刺さったからだと思うが、まるでフランシス・ベーコンピカソのある時代の狂った人物画まで連想させるような彼の絵画は今後も興味深く見続けて行かなければならない。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170321143158j:plain

展覧会タイトルの文字を作品としても展示している。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170321143243j:plain

よく見ると描いている部分と描かずに地を残している部分がある。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170321143328j:plain

花の花弁を接写したような作品だが何か得体の知れない物に見える。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170321143404j:plain

彼の作品に多く登場する人物の顔が潰された肖像画は不気味だ。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170321143454j:plain

3階のギャラリースペースには大きな作品も多数展示されていた。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170321143543j:plain

歪んだ肖像や暗い世界の中で甘い臭気を発するかのような植物。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170321143658j:plain

ポーズする女性の姿だが潰された顔の部分にはユーモラスな目が!

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170321143742j:plain

古いアメリカの新聞かなにかにありそうな肖像写真が歪んでいる。

 

The outside of distance

パウロモンテイロ初の個展

六本木のTOMIO KOYAMAギャラリーでパウロモンテイロの個展「The outside of distance」が4月22日まで開催されている。MISAKO&ROSENギャラリーとの共催となるこの展覧会はブラジル出身のアーティスト、パウロモンテイロの日本初の個展である。ペインティング、ドローイング、彫刻などをミニマルに且つ表現豊かに制作するこの作家はサンパウロ州立美術館で大回顧展が開催されたほどのアーティストでニューヨーク近代美術館にも多くの作品が収蔵されるなどブラジルの現代美術界を代表する作家だ。

 

空間に引き込まれる作品

パウロモンテイロの作品はミニマルであってそうでない、単純なようでいてみれば見るほど空間に引き込まれるような不思議なパワーを秘めている。キャンバスには色が塗ってあるがその絵の具の塊がキャンバスの端に盛られていたりして色であると共に物質としての存在感を示す。そしてその回りに散在する鉛などの堅い素材で作られた彫刻とのバランスやアンバランス、共鳴感が空間に独特な緊張感を醸し出すのである。色々な角度から見ると様々な表情を見せる作品群は独自の重力場を作り上げているかのようだ。日本初の個展は必見である。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170320171356j:plain

鮮烈な色とミニマルな表現の絵画だが絵の具は物質としても存在する。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170320171501j:plain

壁に張り付く鉛のオブジェは回りとの関係性の中で意味を持つ。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170320171536j:plain

絵画作品に鉛のオブジェが加わり空間に独自のリズムを作り出す。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170320171628j:plain

ギャラリースペースを使って絵画とオブジェが力関係を作る。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170320171719j:plain

特に絵の色のインパクトと独特なバランス感覚は素晴らしい。

f:id:hynm_ryota_tanabe:20170320171818j:plain

大型の絵もあったが、色の配置と形、伸びて行く動きが面白い。