Coyote

 

日本の抽象表現

Maki Fine Artsにて8月27日まで白川昌生さんの個展「Coyote」が開催されている。プロフィールを見ると白川さんは1948年福岡県に生まれ70年代にフランスとドイツで哲学と美術を学んだそうである。81年にはデュッセルドルフ国立美術大学を卒業、83年に帰国後は群馬県を拠点に作家活動をしているそうだ。近年、日本の前衛美術やモノ派と呼ばれる作家などが世界で注目される中、白川さんのシンプルだが独自の存在感を示す作品は日本の抽象表現として興味深い。

 

Coyoteとは?

今回の作品展の名前でもあるコヨーテに関して作家はこの絶滅危惧種の野生動物の存在に自らの内にある知恵を感じたいのだと述べている。森や林の中、様々な種類の緑色が溢れかえる世界を無限の色の差異を知覚しながら進んでいくコヨーテの活動に習いその知恵を自らも感じたいのだという。とても控えめでシンプルだが美しいバランスで組まれたキャンバスと廃材の絶妙な組み合わせと色の差異を是非コヨーテに想いを馳せながら鑑賞して欲しい作品である。

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究極に突き詰られた色と形と素材の質感の組み合わせ。

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グレー、白、淡いグリーンの組み合わせがとても美しい。

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廃材にのネジ穴の後やペンキの剥がれた跡なども作品にする。

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淡いピンクとイエローの組み合わせは力強い存在感だ。

夏のない年

アメリカで活動

8月5日まで外苑前のMAHO KUBOTAギャラリーにて播磨みどりさんの個展「Year without a Summer」が開催されている。「Year without a Summer」とは1816年に実際に起こった「夏のない年」のことだそうだ。播磨さんはアメリカに渡って作家活動をしているそうで今後の活動も楽しみだ。平面作品、立体作品、立体作品を撮影してエディションプリントした写真作品がある。平面の作品には普段は捨てられそうなパッケージやゴミのような紙切れ、布切れ、箱など様々な身の回りのものがコラージュ的に使われる。ものの溢れる社会においてすぐに消費され捨て去られるものを作家なりの感性で作品に変身させるのである。

 

コピーで作品作り

もう一方で興味深いのは立体作品の多くで、これは実際の洋服やバッグ、スニーカーなどをコピーして作られる。白黒コピーされたそれらのイメージは鮮明ではなくかすれ気味で時間とともに風化した「何か」のような独特の風合いを持っている。そのコピーした平面を立体に作り上げなおすというのがこれらの立体作品でスニーカーやバッグはもちろん、等身大の親子や男の子の像まで作り上げているのが驚きだ。アメリカで磨かれた感性がこの消費社会に対する痛烈なメッセージを含む作品を見事に力強く美しい作品にしているのが素晴らしいと思った。

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白黒コピーされた洋服を再構築して実物大の立体作品にしている。

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写真の前に垂れ下げられた切り刻まれた後の紙くず。

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値段がついた袋やゴミのような切れ端のコラージュ。

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スニーカーの形に立体作品化された白黒コピーの紙。

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アナと雪の女王のバッグはかすれて色が抜けたように見える。

「Fantasy land」

夢の中の国

六本木の小山登美夫ギャラリーにて7月22日まで桑原正彦の個展「Fantasy land」が開催中だ。1997年に初めて開催された「棄てられた子供」展以降、小山登美夫ギャラリーでの個展は10回目になるそうだ。桑原氏は1959年生まれ、子供の頃は高度成長期の日本でありそこには恐ろしいまでの速度で変化していく世界があった。石油化学製品が溢れ、大量生産大量消費の世の中では公害やゴミ問題など急速な成長による問題も発生した。そんな時代背景が桑原氏の表現の原風景となっているという。子供の頃の夢の中の風景、夢の中の国がそこに繰り返され描かれるのだ。

 

悲しさとユーモア

見渡す限り広がる同じ形の団地や集合住宅の殺風景さ、消費され棄てられる人形、汚染された川とそこに現れた奇妙な生物、そんな殺伐としたもの哀しい風景は悲しさとともにユーモアのある手法で描かれる。極端に濃淡の薄い世界、遠い記憶の中でぼんやり存在したその世界は現代を生きる我々がふと感じることのある空虚感や不安感と共鳴するかのようだ。桑原氏の絵はなんとも不思議で変なのであるが独特の味わいがある作品だと思う。

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濃淡の少ない世界に立つなんの変哲も無い建物は殺風景だ。

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汚染された大地に現れた奇妙な生き物たちだろうか?

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名もなき人形たちはいつのまにか棄てられてしまった。

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奇妙な眼差しでこちらを見る人形はちょっと不気味である。

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遠い昔、子供の頃に見た夢の国にある建物に雪が降る。

”Les Sens”

日本とは違うひかり

ヨーロッパで出会った日本とは違う刺すような光に衝撃を受けて以来、パリを拠点に写真家活動をしてきた田原桂一が6月6日に他界された。その田原桂一の写真展が銀座のPOLA MUSEUM ANNEXにて7月9日まで開催されている。ひかりを通して自然や人、風景など様々な被写体を作品世界に移し続けた写真家にとって最後の展覧会となってしまったが大きな手と小さな手の白黒作品や光を放つインスタレーション、床一面に砂つぶの敷き詰められた会場は圧巻の迫力である。

 

ひかりを表す

ヨーロッパの鮮烈なひかりを表すために田原桂一は写真に限らず彫刻やインスタレーション、建築にまで幅広く活動の場を広げた。77年に発表した「窓」シリーズがアルル国際写真フェスティバルで大賞を受賞して以来、一躍世界的に脚光を浴びた作家は日本やヨーロッパで数々の展覧会を開いてきた。この展覧会”Les Sens”は木村伊兵衛賞を筆頭に数々の賞も受賞した巨匠、田原桂一が自ら監修した最後の展覧会となってしまったがこの貴重な機会に是非見に行っていただきたい。

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大人の手と赤ちゃんの手が大判プリントされた圧巻の白黒写真。

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会場の床は一面黒い砂つぶで覆われ暗い中インスタレーションが輝く。

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会場のあるビルの1階ウィンドーにも作品が展示されていた。

MADSAKI降臨

今や人気作家

15日に終わる直前だったがKaiKai KiKi GalleryMADSAKIを見に行けた。「Here Today, Gone Tomorrow」というタイトルのMADSAKIの個展、大きな作品も含めてかなりの作品数だった。今から15年ほど前に中目黒でディレクターをしていたSPACE FORCEでMADSAKIとアンダーカバーのジョニオ君のコラボレーション展を開催したが山積みのポスターが飛ぶように売れたのを記憶している。当時はニューヨークでメッセンジャーをしていたMADSAKIだが、今やアートフェアでも見るくらいの人気作家となった。

 

村上隆と仲良し

そんなMADSAKIだが、最近は村上隆さんと仲良しでいつも一緒らしく今回村上さんのギャラリーで個展をしたのもそう行った経緯なのだろうか。絵の方だが細いスプレーをまるで筆のように操り大胆な絵を描くという独特テクニックで異才を発揮している。はだけた着物でくつろぐモデルの女性はMADSAKIの奥さんだそうだがゆるい絵の状況の雰囲気とスプレーの彩色のおびただしい絵の具のたれた感じの緊張感が同じ画面に混在してなんとも不思議な世界を作り出している。今後もさらに楽しみな作家に違いないが多分絵はもう手の届かない金額になってしまったんだろうなあ。

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スプレーで描かれる黒い点の目がトレードマークになっている。

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おそらく写真から描いているのだが面白い構図だ。

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幸せな家族の記念撮影なのか、しかし、黒い目は表情を隠す。

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はだけた着物姿で歯を磨く女性は奥さんがモデルらしい。

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だらしなく飲んでいる姿とおびただしく垂れた絵の具の対比。

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化粧をなおす後ろ姿。割と丁寧に描きこんでいる印象がある。

 

進化するFrancfranc

25周年目のブランド

外部アドバイザーとしてFrancfrancを運営するバルスと仕事をし始めてもう10年以上になる。振り返れば、高級志向のインテリアブランドBALS TOKYOを立ち上げたり海岸のゆったりしたライフスタイルのブランドWTWを始めたり様々なことがあった。そのバルスが運営する看板ブランドFrancfrancがブランド開始から25周年を迎える今年の秋に変身を遂げる。Francfrancというブランド自体も変身するがバルスも他のブランドを一切やめてFrancfranc一本で新たなスタートを切るのだ。

 

より万人向けに

Francfrancといえばインテリアブランドではあるが特に女性に人気が高くカラフルで可愛いアクセサリー的な商品も多い印象だ。25周年という節目の時期にそういった今のブランドのあり方を否定するのではなくFrancfrancをより万人に向けたブランドに変化させてゆくというのが新たな方針だ。デザインやスタイルはもちろん、商品の「もの」としてのクオリティーに徹底的にこだわり生産の背景にあるストーリーも伝えていけるような商品を新たに投入していく。新商品の展示会に行ってみたがその新たな取り組みは非常にエキサイティングでインテリア業界全体のクオリティーを牽引するような力を感じる出来栄えだった。今年の秋からのFrancfrancにご期待ください!

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ロンドンのスタイルを取り入れた新たなインテリアのラインナップ。

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シックなソファやクッション、陶芸品もスタイリッシュだ。

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高級感のある商品の数々は新たんフランフランを象徴する。

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食器類もお洒落なものが多く投入される。

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今までの女性に人気なフランフランよりも万人向けな世界観。

カワハラシンスケ個展

パブリックデーに是非!

7月27日まで南青山にあるアートサロン「セーヌ」にてカワハラシンスケさんの個展、「フォルム」が開催されている。僕がディレクターしているこのギャラリーはアートサロンというコンセプトで色々なアートを紹介しているが普段はアポイントメント制となっていて毎週木曜日の14時から20時だけはパブリックデーということで自由に見れる。見にきたいという方は是非木曜日にお越しください

 

シンスケさんはずっとパリを拠点に活躍して来たアーティストでありアートプロデューサーだ。また、以前ご紹介したレストラン「うさぎ」もプロデュースしたり実に多才な方である。今回は以前に描いた水墨の作品も少しあるもののほとんどがこの展覧会のための描き下ろしで非常に意欲的に取り組んだいただいた。うさぎ好きなシンスケさんらしく全ての作品のモチーフはうさぎだが展覧会のタイトルが示す通り様々な形「フォルム」を面白く描いている。ステンレスに描いてみたり色やテクスチャーなども新たな試みに挑戦している。可愛くて少し毒気もあるうさぎに癒されたい方は是非見に来ていただきたい。

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うさぎさんが絡まって面白い形に。木を焼いた額もオリジナル。

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大きなうさぎと小さなうさぎがにらめっこ。可愛い!

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青い色が鮮烈なうさぎはよく見ないとうさぎに見えない不思議さ。

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作品が展示されたセーヌの内観、サロンらしく中央にソファが。

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ステンレスに描かれたカラフルなうさぎは表面にテクスチャーもある。

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ダンボールで作られた大きな屏風は去年京都で展示された作品。

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水墨画は人気ですでに大きな作品以外は売り切れてしまった。

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ユーモラスな表情のうさぎ。色合いなどどこかジャポニズム的な魅力だ。