温室

「肉体」というテーマ

天王洲アイルのTERRADA Art Complex3階にある児玉画廊で62日まで大久保薫の個展「温室」が開催中だ。「肉体」というテーマを絵画で表現してきたという作家は身近な存在である肉体を描くにあたってそれを身近な存在ゆえにただ描くだけでは許されないという姿勢で制作に挑んできたという。そのために作家は棒の先に筆をつけて描いてみたり無数のスケッチを事前にするなど様々な試行錯誤を繰り返す。それは肉体そのものを意識しすぎないようにする試みでありまた一定の距離を保って肉体を対称化することができるかという試みでもあるという。一見するとフェティッシュのような露骨な裸体だったり奇抜なシチュエーションの中の肉体だが妄想や偏執によってではなく観察するような乾いた視線で描かれているのが特徴なのだ。何れにせよ、この若手作家の絵には色彩やマチエール、画面構成など並々ならぬ才能を感じたので今後もさらに楽しみであるし絵画が好きなのでこのように大胆で骨太な絵画を描く若い作家が出てきたのはとても嬉しい。

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肉体との距離感を意識しながら絵画へと落とし込んでゆく。

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沢山のスケッチや下絵を繰り返してから絵画制作に入るという。

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なんとも不思議な感じのシチュエーションだが妄想ではない。

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画面のマチエールが非常に面白く仕上がりの画面は複雑だ。

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がっしりとした筆さばきと厚塗りの絵は非常に力強い。

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色彩感覚にも斬新さと独特な世界観を感じる。

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荒々しいタッチだがよく見ると繊細な観察力を感じる気がする。

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ギャラリーでの展示風景。将来的に楽しみな作家だ。

不確かな現実

イメージが消失する

5月26日まで天王洲アイルにあるYuka Tsuruno Galleryにて大崎のぶゆきによる個展「マルチプル ライティング」が開催されている。不確かな現実をテーマに「イメージが消失する」という曖昧で流動的な時間や記憶のあり方を表現した作品は記憶の断片のようでもあるし未来の景色を千里眼で見ているような感じもする不思議な作品だ。

 

独自の手法

作家はこの表現を可能にするために独自の素材や制作方法を開発しながら「イメージが消失する」現象を作品化しているという。未来に起こることや過去のことなどを現実として受け取る感覚について考えながら記憶、時間などについて深く考察しつつ曖昧さや懐かしさのような感覚を誘う作品を展開する。また作家はマサチューセッツ工科大学のブラッド・スコウ博士の「過去や現在、未来は同時に存在しており、スポットライトが照らすように現在がその空間を移動してゆく」という「相対論的スポットライト理論」からインスプレーションを受けているという。我々が普段気にせず生きているこの時間と現実について改めて考えさせてくれるような作品である。

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イメージは記憶の底にあるのか、または未来の景色なのか?

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作品とともに鏡を使ったインスタレーションも面白い。

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イメージが消失した作品が沢山額に入れて展示されている。

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流動的で消えそうなイメージはどこか懐かしいような感覚もある。

巡りゆく日々

形容しがたい空気感

銀座のCHANELにあるCHANEL NEXUS HALLにて5月4日までSarah Moonの写真展「巡りゆく日々」が開催されている。30年以上にわたり第一線で活躍してきたサラ・ムーンは女性はもちろん動物や自然風景などを独特の写真作品として撮影し続けてきた。80年代のファッション誌などで彼女の写真を見ることが多かったがボワーンとしたような形容しがたい空気感が印象的で一体どうしたらこんな美しい写真が撮れるのかと思った覚えがある。

 

独自の表現

サラ・ムーンの写真は絵画主義的などと例える人もいるようだが確かにその幻想的で奥深いイメージの力強さと絵画のような画面構成はファッション写真を撮っていた頃から独特の世界観で迫ってくる雰囲気があった。1960年代にモデルとして活躍した後、70年代からファションや広告の写真を始めて1985年に作家としての作品制作を始めたというがその10年後には「パリ写真大賞」を受賞するまでになった。その後も数々の賞を受賞したり写真集も出版してきたサラ・ムーンは映像制作にも意欲的で数多くの作品を残している。その奥深く、詩的で、鮮烈な力を放つ写真は印象的で是非見て欲しい展覧会だと思う。

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女性の曲線美を美しく捉え表現することに卓越した力を持つ。

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80年代のファッション雑誌でサラ・ムーンの写真は衝撃的だった。

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何気ない風景も深く美しく捉える視点を持った写真家だ。

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時にはドキッとするような美しい女性の写真を撮ると思う。

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撮影の仕方やプリントの焼き方など彼女なりのこだわりがある。

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ネガティブイメジのような不思議なエフェクトの作品。

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女性の姿が撮られているだけなのに奥深くパワフルだ。

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真っ白の壁の会場にはたくさんの人が訪れていた。

プレイルームと飯事

初めての個展

5月7日まで白金の児玉画廊で緒方ふみの個展「プレイルームと飯事」が開催されている。緒方ふみは児玉画廊が定期的に行うグループ展、「ignore your perspective」に以前参加しているが今回が初めての個展だそうだ。作家の中では作品は絵画と称されるのだそうだが見た感じは立体作品、インスタレーションという作品になっている。絵画を制作する、絵画で美しさを表現するという試みは非日常的な行為でありそれは作家が考える美しさと異質なものになるのだそうだ。

 

美しさとは?

緒方ふみにとって美しさとは「生活のような切実な行い」であり人が生きるためになすべき日々の行いこそが切実で美しいいと感じるのだという。そういう中にあって美術の制作行為は圧倒的に異物であり作品制作のために苦しむことや迷うことは「生活のような切実な行い」から離れた行為となってしまう。そんな問題と向き合うために絵画制作において「在ることで美しい」やそういう状態への「在り方を示す」ことを自分なりの絵画として認識することから始めたものが今回の作品なのだそうだ。絵画という枠組みを根本的に解体して大胆に、そして果敢に新たな絵画の定義に挑戦する作家の心意気のような気合いは見て取れた展覧会だった。

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くり抜かれたフレームの中にワイヤーやクリップで色が置かれる。

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木のボードにクリップで記事の破片がコンポジションされた。

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黒い切り抜かれたフレームにワイヤーで円形物が吊るされる。

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白いパイプに垂れかかるいくつもの作品は全体で一つの絵画世界を作る。

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くり抜かれた枠の中に紐と生地の切れ端が構成される作品。

 

PARTY TIME!

レセプションをはしご!

いつもアートの話ばかりなのでたまにはファッションの話題です。昨日はレセプションパーティーが重なったので二つのパーティーをはしごしてきました。一つは新しくなったHUNTING WORLDの二子玉川店のレセプションパーティー。新デザインチームのディレクションに知り合いのデザイナー相澤君が就任してお店のインテリアデザインはまたまた知り合いの片山さんが担当したというのででかけてみました。昔からあるブランドを見事に新生させててとても良かったです。そのあと向かったのは原宿のGYRO1階にて開催していたアミ・アレクサンドル・マテュッシのカクテルパーティー。AMI SMILEYコラボレーションを記念したカクテルパーティーにはデザイナーのアレクサンドル・マテュッシも3年ぶりに来日していました。DJガンガンの中でノリノリのカクテルパーティーはアットホームな感じでしたが凄い数の人で溢れかえっていた。というわけで色々なイベントが多い春がやってきました!

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ブランドのDNAはそのままに新デザインチームが頑張ってます。

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デザイナーの相澤君もいました。素晴らしいデザインでした!

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昔からある馴染みのブランドだけに新たな試みをしたのは凄い。

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オリジナルのプリントとか面白い素材使いがいい感じです。

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これとかかなり可愛いな〜って思いました。ブランドイメージ変わる。

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ami SMILEYのコレクションイメージもなかなかいいですね。

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ジャケットとか春にかなり欲しいと思えるラインナップです。

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シャツとかも良さそうでした、胸のSMILEYマークがポイント!

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このスニーカーはマジに買おうかどうしようか考え中。。

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SMILEYマーク!なんか気持ちをハッピーにしてくれますね。

 

 

 

 

 

 

ベルトラン・ラヴィエ展

流用と表現

表参道にあるESPACE Louis Vuitton TOKYOにて4月19日から9月24日までフランスのアーティスト、ベルトラン・ラヴィエの作品展が開催されている。初めて知る作家だったが1980年代から90年代に起こったアプロプリエーション(流用)アート運動に強い影響力を与えた作家だそうだ。日常的な物を流用してそのもの本来の目的とは異なった意図を表現するこのアート運動はニューヨークにおいてはシミュレーショニズムという表現の作家たちへと続いた表現運動なのだろうか。そうであるならば今最もホットなジェフ・クーンズも同じ表現のルーツを持つ作家ということになる。作品を見ると確かに80年代ニューヨークで見たアシュリー・ビカートンや初期のジェフ・クーンズの作品に通じるものを感じた。

 

ヴィトンと現代アート

ルイ・ヴィトンベルナール・アルノーの影響によって現代アートに甚大な金と労力をつぎ込んできたファッションブランドである。その現代アートコレクションの量はスイス銀行ドイツ銀行についで世界第3位といわれる。パリにはフランク・ゲイリー設計の美術館もある他このESPACE Louis Vuittonミュンヘンヴェネチア、北京、東京の世界4都市で展開しアートコレクションからの作品展を絶え間なく開催しているのだ。現代アートのために徹底してサポートすることの全てが回り回ってルイ・ヴィトン社に還元されるという実にスマートなビジネスを展開しているのだ。考えてみればルイ・ヴィトンがコラボレーションしたことで今まで現代アートを知らなかった世界中の人がリチャード・プリンスや草間彌生村上隆、ジェフ・クーンズなどを知ったわけでその影響力は凄まじい。表参道のESPACE Louis Vuitton TOKYOはスペースも天井が高くて開放感があって素晴らしいので是非出かけてみてはいかがだろうか。

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サルバドール・ダリのデザインしたソファーを冷蔵庫に乗せて。

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万博のモニュメントとニジェールの呪物のブロンズ作品。

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フランク・ステラのアイコニックな作品をネオン管で表現。

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フランスのサント・ヴィクトワールの道路標識を絵画的に表現。

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コミック雑誌ミッキーマウスに出てきた現代アートを実際に表現。

 

PEEKABOO

五木田智央展

初台の東京オペラシティーアートギャラリーにて五木田智央展「PEEKABOO」が6月24日まで開催されている。五木田といえば白黒の鮮烈な絵画が有名だがイラストレーションから出発して今まさに現代アートの世界で世界的注目を集める作家となった。60年代や70年代のアメリカを中心とするサブカルチャーアンダーグラウンドの雑誌、写真に影響され制作されてきた作品は五木田にしか描けない独特の世界だ。今回は世界中にあるコレクションからの貸し出し作品と五木田をレプリゼントするタカ・イシイ・ギャラリーから提供された2018年度の新作が見れるまたとないチャンスである。

 

KAWSが注目

五木田の名前や作品は随分前から知っていたしその作品の放つ異様なパワーはいつも独特で一種不気味な心霊写真を見るようなドキドキ感さえ感じてきた。そんな五木田の作品が近年にわかに世界で注目を集めるようになったのは世界的アーティストとなったストリートアーティストKAWSが彼のファンだったからだという。KAWSのアトリエにあった五木田の作品集にメアリー・ブーンギャラリーのスタッフが注目したのがキッカケだったのだそうだ。この展覧会ではタカ・イシイ・ギャラリーから以外にもKAWSテイ・トウワ氏、メアリー・ブーンギャラリー、前澤友作氏などのコレクションからの貸し出し協力が見て取れた。今年一押しのパワフルで圧巻の展覧会間違いなしなので是非オペラシティーへ見に行って欲しい。

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顔の真ん中が黒く変形した女性。写真のようなだけに不気味だ。

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白黒のヌードは体の部分なども単純化されたり変形している。

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アメリカの家族の集合写真も異様なまでにデフォルメされる。

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バニーガールなどのカルチャーもよく出て来るテーマである。

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アンダーグラウンドな雰囲気のショットも異常なパワーを放つ。

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五木田にとってプロレスも繰り返し描いてきたテーマだ。

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2018年制作の新作のヌードもさらに異様なムードを増していた。

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小さいサイズのドローイングやペインティングの集積は圧巻。

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廊下にはもの凄い数のプロレスラーのレコジャケが展示されていた。

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延々と続くプロレスラーのレコジャケ作品は凄く面白かった。