知覚された色彩

色彩の力

6月9日より7月7日まで天王洲アイルにある児玉画廊にて鈴木大介の展覧会「Perceiving 」が開催されている。「Perceiving 」とは「知覚する」という意味だがなるほど作家によって知覚された色彩の力を大いに感じる抽象画だ。抽象画というのは個人的にとても好きな絵画なのだが抽象的に描かれた絵にはごまかしも効かないし瞬時にセンスがあるかないかがわかるものだと思っている。どんなに頑張ろうがそういう問題ではなく才能が本物か否かは絵から自然に滲み出てくるというか見れば分かってしまうものだと思う。そういう意味でもこの作家は才能に恵まれているしそういう人が抽象画という表現に真摯に向き合った果てに結果として見出した鮮烈な色彩や大胆な画面構成、流れる線などは気持ち良いほど力強く見るものに迫ってくる。まだ若い作家だと聞いたが今後がとても楽しみだと感じた。

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絵の具の垂れと横に走る線の面白さが印象的だ。

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抽象的な表現では下手なごまかしなどは一切効かない。

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これも絵の具の垂れを使った表現だが色彩に才能がある。

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美大の卒業制作だったというが抽象画の素晴らしい大作である。

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ただひたすら真摯に画面に向き合って抽象表現に挑む。

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絵の具を塗ってはわざと流れ落として絶妙な動きを捉える。

 

蜜と意味

時間を紡ぐ

天王洲アイルにあるKOSAKU KANECHIKAギャラリーにて沖潤子の展覧会「蜜と意味」が721日まで開催されている。以前に開催されたグループ展でも見た作家だが今回は個展で広いギャラリースペースをうまく使って新作12点を展示していた。作家は古い布やボロが経てきた時間やそれらが語る物語の積み重なりに刺繍と自身の時間の堆積を刻み込み紡ぎ上げることで新たな生と偶然性を孕んだ作品を完成させる。まるで時間を紡ぐように古い生地の上に作家が施す信じがたいほどに細かく複雑に編み込まれた刺繍、それを石鹸で洗うと蓄積していた汚れが落ちたり色が抜けたりして針目は独自の色に染まってゆく。古い布の持つ歴史に作家の施す刺繍などの手が加わり新たな生命を宿した作品へと昇華する様にはどこか「生み出す」という女性ならではの性を感じずにはいられない。繊細かつ強靭な表現からは生きるということの真理が見え隠れしているようでもある。

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古い布に細かな刺繍が無数に縫い込まれている作品。

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古い木の箱の中、古い畳のような背景に作品が配置される。

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無数の刺繍を施したのち古い布を石鹸で洗ったりもする。

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ギャラリーのスペースを効果的に使った展示も良かった。

POOL PARTY

ジャン・ピゴッツイ個展

Kaikai Kiki Galleryにて開催されているジャン・ピゴッツイの個展「Charles and CHARLES AND SAATCHI THE DOGS JEAN PIGOZZI」と同時開催している天王洲アイルにあるSCAI PARK の「POOL PARTY PHOTOS BY JEAN PIGOZZI」展をギリギリ見に行けた。80年代からニューヨークの社交界などで数々のセレブリティー達と一緒に自撮りし続けていたりするユニークな写真家でもあるのだがSCAI PARK の「POOL PARTY PHOTOS BY JEAN PIGOZZI」展では著名人達の集まる自宅でのプールパーティーを撮影している。ヌードで泳いだりと普段は高価な洋服に身を包んでいるであろうセレブ達が人前では見せないプライベートな瞬間が見事に激写されている。16日までなので見たいという方は天王洲アイルのSCAI PARKへ是非お急ぎください。

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自宅でのパーティーなのでヌードで泳ぐセレブもいる。

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裸で豪快にプールに飛び込む。人魚柄の壁紙も可愛らしい。

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ハリウッドセレブ、シャロン・ストーンもポーズ!

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知人と戯れるミック・ジャガーもプライベートな顔だ。

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大きな浮き輪でくつろぐセレブを激写!びっくりしている。

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ギャラリーには映像のインスタレーションもあったりした。

CANCER

大胆な試み

外苑前にあるギャラリービルEUKARYOTEにてアートオーガナゼーション「CANCER」による展覧会「THE MECHANISM OF RESEMBLING」が7月1日まで開催中だ。美術評論家の花房太一の呼びかけで2016年に結成されたCANCERは5人のアーティストと一人のパートナーで構成される。西洋のファインアートを東洋的身体によって突き崩し、ルネッサンス以来の新たなパースペクティブを獲得することを目指すという大胆な試みがこのアートオーガナゼーション「CANCER」の目的だという。今ある世界とは別の世界を創造するためにいくつもの計画やプロジェクトを多数進行させているという「CANCER」だが今回が初の展示となる。EUKARYOTEのギャラリー内はもちろん外壁まで変えてしまった展示はアグレッシブで斬新だ。アートを武器に攻める姿勢を前面に押し出すこのアートオーガナゼーション「CANCER」、今後の活動も非常にきになる。

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ギャラリーの1階を占拠した大胆なインスタレーション

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ギャラリー2階ではコンセプチャルな作品展示が目立った。

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2階に展示されている平面作品。ガムで壁に貼り付けてある。

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どうやらガムがテーマ?のような展示の写真作品。

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これもガムのようなものがへばりついた平面作品。

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3階では聴診器片手にひたすら肉を叩く全裸の男の映像が流れる。

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赤いペンキがドバーッとかけられてしまったギャラリービルの外壁。

「理科の窓」

女性作家のグループ展

先月に渋谷のヒカリエで購入させていただいた作品作家が所属するギャラリーを見に行くために大塚駅にほど近いKAYOKOYUKIギヤラリーを訪ねた。ちょうど開催されていたのはアドリアナ・ミノリーティ、イエン・ホ、大田黒衣美の3人の女性作家のグループ展だった。面白いと思ったのは3人の作家がそれぞれアルゼンチン、ニューヨーク、愛知県という異なった場所を拠点に活動していることだった。当然ながら場所が違えば3人の使う言語や育った文化も違うのだが「作品を通しての表現」という共通言語でギャラリースペースを満たしていた。展覧会のタイトルである「Science Window」も面白く、翻訳すると「理科の窓」となるこのタイトルは男性のズボンのファスナーが開いていることを指す「社会の窓」に対しての女性版として使われたものだという。また、「Science」という単語の起源として我々が知る「科学」ではなくラテン語の「知る」を引用し「なぜ?」と疑問を持ち続けて来た人類の歴史と今は科学の発展により多くの答えが見つかったようでいても我々はあい変わらず「なぜ?」という根源的な疑問を感じ続けていることが展覧会のタイトルの背景にあるのだという。男性で言う「社会の窓」の女性版「理科の窓」の状態とは社会に向けて閉めているはずの「窓」が偶然にも開いたままになっているのかまたは意図的に開けているのかというのはさておき、作家たちはあえて「窓」を開けた状態で私的な思考や感情などを社会にさらけ出すことによってそれぞれの表現を模索しているのではないだろうか。

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アルゼンチンの作家、アドリアナ・ミノリーティの作品。

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ジェンダーに関する固定観念への挑戦としての幾何学人間?

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イエン・ホの立体作品は祭壇のような形で壁面に備え付けられる。

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イエン・ホは日常的に身近にあるものを作品にするという。

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大田黒衣美はガムやうずらの卵の殻などを使って作品を作る。

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モザイクのようにうずらの卵の殻が作品として再構築される。

ジャン・ピゴッツイ個展

ユニークな写真家

Kaikai Kiki Galleryにてジャン・ピゴッツイの個展「CHARLES AND SAATCHI THE DOGS JEAN PIGOZZI」が6月16日まで開催されている。同時期の開催として天王洲アイルにあるSCAI PARK にて「POOL PARTY PHOTOS BY JEAN PIGOZZI」展も開催しているのでそちらも面白そうだ。躍動する愛犬を自身の小型カメラで接写した白黒の写真は戯れるというよりも半ば喧嘩する犬の表情をその滑らかな毛並みとともに捉えている。展覧会自体ももちろん素晴らしかったがこのジャン・ピゴッツイという人が実は凄い人なのだ。イタリア人実業家でアートの大コレクターでもあるが彼を最も有名にしたのは80年代からニューヨークの社交界などで数々のセレブリティー達と一緒に自撮りし続けるユニークな写真家でもあることだ。今回は愛犬の写真だが彼のセレブとの自撮り写真は凄くてウォーホルからミックジャガー、レディーガガまでありとあらゆるセレブ達が登場する。また、SCAI PARK にて同時期に開催されている個展での写真は著名人達の集まる自宅でのプールを舞台にしたパーティーを撮影したものだ。上流階級の生活を観察する手段として日記的に様々な写真を撮り続けたというが数十年に渡る記録写真は貴重な歴史的資料にもなり得る。

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戯れるというか喧嘩してるような犬達の表情だ。

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腕のアップ写真。毛並みの滑らかさが白黒写真で浮かび上がる。

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カイカイキキギャラリーの中に白黒の犬の写真が並ぶ。

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躍動感、緊張、様々な動きが写真から伝わってくる。

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小さなカメラで接写しただけこの迫力というのが凄い。

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インビテーションにも使われた作品。牙むき出しの迫力!

恋夢 愛無

荒木経惟個展

六本木のタカ・イシイギャラリーにてアラーキこと荒木経惟の個展が6月23日まで開催されている。初日のレセプションに行ったがものすごい人でギャラリー内の撮影は断念し後日に再び写真を撮りに訪れた。初日には荒木経惟ご本人も在廊していたが70歳を超えた今もパワフルで声も大きい。荒木経惟は70年代から作家として活動し続けているが撮影において被写体と距離感を極めて近くもち私的ともいえる関係を切実に切り取ったような表現で知られる。「私小説」になぞらえ自身の写真を「私写真」と呼び「私写真(私小説)こそが写真である」と宣言して以来、荒木経惟の作品の全てにその精神は通底している。生と死という普遍的なテーマを撮り続けるが愛する妻の死や自身の病、老いていく中で自らの死を覚悟する近年だったが2017年に開催された大回顧展での自らの写真に「死から生に向かう」ように励まされたそうで今日も精力的に制作を続けている。今回の展覧会には99点の白黒写真が展示されているが全ては中判モノクロームフィルムで撮影されている。「究極の写真はモノクローム」と断言する作家が見せる生と死の姿を是非ご覧いただきたい。

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毎回お約束の作家自身が墨で描く展覧会タイトル。

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6X7フィルムで撮影されたモノクローム写真が壁に貼られる。

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朽ち果てる、死に向かうというのも重要なテーマだ。

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普通の街並みの中にも荒木の世界を切り取って見せる。

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私写真宣言をした作家は被写体と密接に関わり撮影する。