村井のいっぽ

パワー炸裂

6月28日から7月28日までMAHO KUBOTA GALLERYにて村井祐希の個展「村井のいっぽ」が開催されている。23歳という若さで鬼才と名高い村井祐希のコマーシャルギャラリーでの初個展となるのだそうだ。制作過程で生成と破壊を繰り返した絵画作品はもはや平面という縛りからも脱して見るものの知覚を揺さぶるような混沌の塊と化しているかのようである。キャンバスのあるものもあればないものもあり破片のようなものもある中に大量の絵の具の塊、むき出しのワイヤーやテープの類など様々な要素がむき出しになって迫ってくる。内なるパワーが炸裂したような作品は他に類を見ない迫力で圧倒的な存在感を主張する。若さゆえのエネルギーなのかまさに鬼才のなす技なのか?とにかく凄いのでオススメします!

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最初はキャンバスに絵の具を塗るところから出発したのだろうか?

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絵画なのかオブジェなのか?そういうカテゴリーを拒む作品だ。

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垂れ下がったワイヤー、むき出しの絵の具。パワー炸裂である。

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かなりの大作もあったが色やマチエールの凄い混沌ぶりである。

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ちょっと絵画っぽさの残るおとなしめの作品でもパワーは十分。

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ここまでくるとキャンバスというよりも何かの切れ端という感じ。

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小さめの丸い作品だが色の爆発具合が凄い感じになっている。

アジアの現代アート

シュシ・スライマン

渋谷ヒカリエにある小山登美夫ギャラリーにてマレーシア出身のアーティスト、シュシ・スライマンのドローイング展が6月27日から7月16日まで開催されている。東京国立近代美術館での「エモーショナル・ドローイング」や2017年のヨコハマトリエンナーレ森美術館でのサンシャワー展など国内の展覧会で近年数多く紹介されてきた作家だ。アジア出身のアーティストが増えてきた昨今においても東南アジア出身の重要な現代アーティストの一人として注目されるアーティストだという。今回はヨコハマトリエンナーレで発表された横浜の土や水を使って描いたシリーズやパリ滞在していた時に描いたベルサイユ宮殿をモチーフとしたシリーズのドローイングなどが展示されている。アジアの現代アートの今を知る意味でもとても興味深い展覧会だと思う。

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薄い絵の具を使って描かれた顔のシリーズ。力がある。

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ドローイングは作家の感情がストレートに出るので面白い。

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こちらも顔の絵。ちょっと怖いけど愛嬌もあるかも。

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横浜の土や水を使って描かれたドローイングのシリーズ。

デヴィッド・ボウイの浮世絵

BOOKMARCで開催

原宿のBOOKMARC地下にあるギャラリースペースにてデヴィッド・ボウイをモデルにした浮世絵展が7月1日まで開催されている。浮世には「今」という意味があり浮世絵は常にその時代の「今」を切り取ってきた表現だという。そんな浮世絵を現代に呼び覚ますようなプロジェクトであるUKIYO-E PROJECTがKISSやアイアン・メイデンに続く第3弾目になる今回モデルに選んだのがデヴィッド・ボウイだ。惜しまれつつなくなってしまったデヴィッド・ボウイだがその独特なパフォーマンスは衝撃的でロック史に永遠に残る存在だと言える。親日家でもあった彼は歌舞伎などの日本の伝統芸能の要素もパフォーマンス取り入れていたと言われるが今回はデヴィッド・ボウイ自身が素晴らしい浮世絵の中に取り込まれた。テリー・オニールが撮影したデヴィッド・ボウイの写真も同時に展示されているほか1階のブックマークの書店では限定本や版画のエディションも販売しているので要チェックだ。

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違和感なくしっくりと浮世絵の世界に存在できるデヴィッド・ボウイ

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ブライアン・ダフィーが撮影した有名な写真が浮世絵に!

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ブライアン・ダフィー撮影のアルバム「アラジン・セイン」用の1枚。

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「ダイアモンドの犬」用にテリー・オニールが撮影した写真。

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狐のような犬と妖艶な姿のデヴィッド・ボウイの浮世絵。

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1階では版画も販売していた。エディション数は200で10万円。

 

「life」

絵画か立体か

市ヶ谷にあるMIZUMA ART GALLERYにて宮永愛子の展覧会「life」が6月20日から7月21日まで開催されている。ギャラリー内には大小の透明な額縁が絶妙に配置されて浮かんでいる。絵画か立体か?作品は謎めいた雰囲気を漂わせ佇みながら見るものと静かに向き合っているようだ。よく見ると透き通った額の中には無数の気泡があるがひとつ一つの気泡は作家自身の記憶を閉じ込めたのか、または見るものもその気泡に自身の記憶を重ね合わせられるのか。イーゼルに掲げられた透き通った額縁も見ているとその透明の中に封じられた気泡の先にどこか懐かしいような静寂に包まれたような気持ちが現れるような気がした。奥の小展示室に展示されている「はじまりの景色」と題された写真の作品にも同様に懐かしいようないつしかの遠い記憶が焼き付けられているようだ。我々は作品を見るのではなく作品を通して世界を見渡しているという視点。我々の周りにある世界や宇宙、命といった神秘の全てがこのシンプルにして力強い作品群を通じて放たれている気がした。

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無数の気泡を含んだ透明の額縁がギャラリー内に浮かぶ。

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古いカバンの中には透明な双眼鏡に小さな猫のオブジェが。

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イーゼルにかけられた透明の額縁。無数の気泡の中に何を見るか。

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闇の中に浮かぶ透き通った額縁と本。置かれた配置も絶妙だ。

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「はじまりの景色」と題された写真作品には遠い記憶が込められている。

「高く、赤い、中心の、行為」

森村泰昌の作品展

6月9日から7月8日まで恵比寿にあるMEMギャラリーにて森村泰昌の作品展「高く、赤い、中心の、行為」が開催されている。1985年にゴッホの自画像に扮した作品を発表して以来、日本人美術家というアイデンティティーを問いながら西洋や日本の名画の中に自身が入り込むような作品やハリウッドスターなどのアイコニックな存在や政治家などに扮した作品で様々な姿を演じてきた森村泰昌の作品展である。「高く、赤い、中心の、行為」と題されたこの作品展は1990年に「星男」と題した頭を星型に散髪した有名なデュシャンポートレートを基にしたシリーズなど含め過去の作品から新作までパフォーマンスも含めた身体行為を基礎とした作品群の側面を考察するものだという。展覧会タイトルでもある新作は1964年に赤瀬川原平高松次郎中西夏之によって結成されたハイレッド・センターが64年に東京の路上で行った「第6次ミキサー計画」での各作家による「行為」を参照しつつ森村泰昌の地元である大阪の鶴橋で行ったパフォーマンスを写真とビデオに収めたものになっている。今回、MEMギャラリーのあるNADiffの地下のギャラリーでも6月24日まで森村泰昌の新たな試みであるMoriP100プロジェクトも開催されているのでそちらも是非ご覧いただきたい。

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森村泰昌の地元、大阪の鶴橋で行ったパフォーマンスの写真作品。

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「第6次ミキサー計画」での各作家による「行為」を参照。

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森村泰昌は自身のパフォーマンスを写真やビデオに作品として収める。

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マルチプルとは製品以上、作品未満のプロダクトなのだそうだ。

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1アイテムにつき100点制作してセットで木箱に入れて販売する。

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恐ろしいフリーダカーロのTシャツが展示してあった。

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フリーダカーロのコーナー?彼女に扮する森村泰昌の写真がある。

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マルチプルを使ってゴッホの世界が箱庭のように小さく再現できる。

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ウォーホルのファクトリーも小さく再現?マリリンは森村泰昌

 

Archi + anarchy II II II

気鋭の作家達

天王洲アイルにあるギャラリーURANOにて所属作家のグループ展「Archi + anarchy II II II」が開催されている。何れ劣らぬ気鋭の作家達が代表的な作品や新作を披露しているが世界的に評価の高い作家もいて非常にいいグループ展になっている。岩崎貴宏は去年のベネチアビエンナーレの日本代表に選ばれた注目の作家だが、日本建築の五重塔や神社などをワイヤーで吊るしてまるで水面に映るリフレクションのように上下に伸びる立体作品を作ったり、タオル、歯ブラシ、繊維や糸、または作家自身の髪の毛など身の回りにある物を使用してミニチュアのオブジェを作るなどユニークな作品で知られる。シンガポールの象徴マーライオンを取り囲むように部屋を作りホテルにしてしまうなど大胆不敵な創造力の西野逹も世界的に評価が高い。URANOはペインターからこうした奇想天外な作品作りの作家まで様々なタイプのアーティストを幅広く扱う素晴らしいギャラリーなので機会があれば是非見に行って欲しい。

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岩崎貴宏のなんとも不思議なオブジェは緻密に作られている。

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西野逹の作品は石膏の彫刻を砕いて再構築したシャンデリアだ。

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横山裕一は近未来の世界を描いた漫画みたいな作品だ。

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かなり独特の世界観で圧倒される小西紀行のペインティング。

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ギャラリー内に様々な作品がいい感じに配置されている。

見えない距離を測る

デジタルとリアルの距離

山本現代ギャラリーにて6月9日から714日まで今津景の個展「Measuring Invisible Distance」が開催されている。展覧会タイトル「Measuring Invisible Distance」は「見えない距離を測る」であるが今回の作品の制作テーマがそこにあるのだろう。この作家の絵画では表現力の圧倒的な迫力とねじ曲がって混在しあったイメージの不可解さが見事に作品化されている。作家はパソコンのフォトショップで加工して作ったイメージを絵画に置き換えて描いているというがなるほどそう聞くとこの独特の世界に納得ができた。しかしながらパソコン上で指ツールの操作によって作られた虚構のイメージをキャンバス上に筆と絵の具を持って物質として再表現するという行為は興味深く作家自身もその作業工程で生じるズレを手探りながらどう定着させるか試行錯誤しながら絵画作品として仕上げているようだ。デジタルの時代にリアルであるキャンバスと絵の具を使った絵画作品をいかにして制作していくのかという距離感を図っているのかもしれない。

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ねじ曲がったイメージや断片が混沌と混在する独自の世界。

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デジタルで作られたイメージ世界がリアルに置き換えられ生じるズレ。

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圧倒的な迫力で迫ってくるような絵画作品だと思う。

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毎回大きな作品が多いが今回も大作が展示されていた。

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非常に卓越した絵画のテクニックが表現を可能にする。

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様々な歴史や時代のものからのイメージの引用が多い。