B29と原郷ー幼年期からウォーホールまで

横尾忠則の展覧会

谷中にあるSCAI THE BATHHOUSEギャラリーにて横尾忠則の展覧会「B29と原郷ー幼年期からウォーホールまで」が7月6日まで開催されている。横尾忠則はグラフィックデザイナーとして革新的なポスターを数多くデザインしたがピカソの展覧会を見て画家を志したと聞いたことがある。以来、画家人生一筋で今日に至るが描く絵のバリエーションは非常に幅広く「滝」や「T字路」などのシリーズもあれば映画や自身の経験や体験に基づいた夢想のような作品もある。今回の展覧会「B29と原郷ー幼年期からウォーホールまで」では幼少期に体験した戦争の進駐軍や空襲の断片がモチーフとして現れるほかアンディーウォーホールのポートレイトのシリーズも展示されている。戦中から戦後の発展を体験してきた作者の心の原風景を描いたような絵画たちは静かに訴えかけてくるような力を秘めていると思う。

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空を横切る黒いB52の姿が不気味な感じがする絵である。

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ターザンなどの映画のキャラクターも絵画にはよく登場する。

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戦後の日本の記憶か?進駐軍の姿が見て取れる。

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ダグラス・マッカーサーの顔や様々な思い出が絵画になってゆく。

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非常に力強く描かれた自画像だが死の気配がある。

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2枚の絵を繋げた作品では右に有名な「T字路」シリーズが見える。

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実に様々なウォーホールを描いたポートレイトが並ぶ壁面。すごい数だ。

ラファエル・ローゼンダール

インターネットアートの代表的な作家

天王洲アイルのTERRADA ART COMPLEXにあるTakuro Someya Contemporary Artにてラファエル・ローゼンダールの展覧会が開催されていたので見に行った。オランダ生まれのラファエル・ローゼンダールは「インターネットアートの代表的な作家」として知られる。現在はニューヨークを拠点に活動する作家だがインタラクションをウェブ上で発表しつつも近年はインスタレーションレンチキュラープリント、タペストリーなどのフィジカルな作品制作にも取り組んでいる。2015年には世界的評価のある作家に毎月作品制作を依頼するニューヨークのパブリックアートプログラムに選出され2月の一月間タイムズスクエアのディスプレィ全体にウェブ作品を展開して見せた。今回はレンチキュラープリントやタペストリー作品が展示されたがクールな感性のとても良い作品だと思った。

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今まで発表してきたウェブ作品は113点も及んでいる。

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ウェブの特性を基本構造にした作品は美しいタペストリーだ。

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レンチキュラープリントの作品は非常にクールな印象である。

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写真ではわからないが見る角度によって色が変わって見える。

そのままのキミが好き

佐野円香の写真展

中目黒にあるW+K+Galleryにて6月30日までフォトグラファー佐野円香の写真展「そのままのキミが好き」が開催されている。”私は誰かを支えられる写真を撮りたい”と語る佐野円香は写真を撮り始めて19年目だという。写真を始めた時から”これが私だ”と表現することからずっと逃げてきたという作家はしかしカメラを持てばどんなこともできる気がしたとも言う。そんな作家が今回発表したのは様々な女性たちの個性的で魅力に溢れるポートレイトの数々だ。それぞれの女性たちは表情も雰囲気も違うが一定のフォーマットで展示することにより彼女たちの中に共通する何かを表している。女性フォトグラファーが撮る女性の姿には女性にしかわからない身体的な体験や精神的な葛藤など様々な感情が溢れ出ているようだ。

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W+K+Galleryは中目黒の目黒川沿いにある。お祝いの花が素敵だ。

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様々なアングルから撮り下ろされたポートレイト。

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それぞれ違う女性たちだが展示のフォーマットを同じにしている。

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女性フォトグラファーならではの視線で捉えた女性達の表情。

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部屋の中でくつろぐようにこちらを見つめる彼女達は自然体だ。

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女性フォトグラファーだからか男が撮る女性像とは違って見える。

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ごくごく普通の昨今に生きる女子達の姿が素直に捉えられている。

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部屋にいる女性に差し込む午後の木漏れ日のような光が美しい。

Object and Image

5度目の個展

Maki Fine Artsギャラリーで池田衆の個展「Object and Image」が開催されているので見にいった。約2年半ぶり5度目の個展となるそうだが今回は今までと違う主題での作品発表となっている。池田衆は主に風景をモチーフに作品を制作してきた。それは都会の風景だったり草花や夜景だったり花火だったりした。写真を撮ってその写真の色々な部分を細かくまたは大胆にカッターで切り取って元の写真と全く違う印象の作品に変えてしまうのが今までの池田衆のスタイルだったが今回は古典的な主題である静物を題材にして作品を作っている。17世紀ヨーロッパで絵画のひとつのジャンルとして描かれるようになった静物画は時代とともに様々な画家たちによって新しい解釈で作品化され近年ではコラージュにまで発展してきた。池田衆の作品はコラージュ的な要素も大きくそこに静物画との親和性を見出し今回の制作のテーマに据えたそうだ。作品は相変わらず素晴らしいテクニックによって細かく切り出されたりまた貼るなどのコラージュ的な要素も加わって見事なシリーズになっていた。新たなテーマに挑戦する池田衆の今後にもますます期待が持てる展覧会だったと思う。

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花は池田衆の得意とするモチーフだが今回は自然の花ではなく静物画だ。

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果物なども静物画ではよく見られるモチーフである。

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右下部分が驚くほど細かく切り出され白い部分が見える。

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まるで絵画の筆のタッチのようにストロークを切り出している。

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左にかなり切り出された果実、右にその前の状態の果実。

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まるで古典絵画のような構図が美しい。

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みかんの入った網の目が細かく切り出されている。

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セザンヌ静物画のような果実の構図に切り出された部分が重なる。

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たくさんのぶどうの一部が切り取られて不思議な印象だ。

迷いの尺度

坂本夏子の展覧会

天王洲のTERRADA Art ComplexにあるギャラリーANOMALYにて坂本夏子の展覧会「迷いの尺度ーシグナルたちの星屑に輪郭をさがして」のためのノート展が開催されている。手を伸ばして届く自らの体のサイズと偶然にも一致するキャンバスを尺度にしてその上に複数の次元を示す基準点を設ける。シグナルは普段受け取っている様々な情報や言葉、温度や知覚といった季節の知らせの中で受け取る信号のようなものらしい。こうした定義に則って読み取られる様々な表現は2次元だったり3次元だったり4次元にまで押し広げてマッピングされるように表現される。立体作品やインスタレーション的作品、絵画作品やドローイングまでこの展覧会では色々な作品を通して「迷いの尺度」を巡る旅のような世界を垣間見ることができる。

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キャンバスの上にマッピングのように広がるカラフルな世界。

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この作家の色彩感覚はとてもユニークで素晴らしい。

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展示方法も様々で面白く総合的に表現世界を体験できる。

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様々な次元を繋ぐように迷いの尺度が可視化されているかのようだ。

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複雑に入り組みながら互いに作用するような感覚がある。

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絵画表現としてとても個性的で繊細である。

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空間に広がっていく基準点を繋ぐように絵画世界が広がる。

エロティシズムは繰り返しではない。

ヨネの展覧会

東京妙案ギャラリーにて米原康正(通称)ヨネの展覧会「エロティシズムは繰り返しではない。」が開催されているというので見にいってきた。ヨネとはもう長い間知り合いで展覧会を開催させてもらったこともあるし伊勢丹で展示をしてもらったこともある。チェキで写真を撮ることが多く即興的にセクシーな女の子のヌードやギャルなどを撮らせたらヨネにかなう写真家はいないのではと思う。その彼がここ数年写真に着色した新しい作品作りを始めたので気にはなっていたが一体何をしたいのか?と思っていたのも事実である。しかし今回の展覧会に行ってなんとなく彼がやりたい表現というか意図のようなものがわかった気がした。何事もやり続けること、自分にしかできないことを追求すること、そんなヨネのスタイルが形になってきたような気がした。

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写真の上に厚めの絵の具を塗って作られる新作。

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白黒写真に塗り重ねられた色が面白いコントラストを生む。

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元となる白黒の写真がいい写真であるとうのは前提のようだ。

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少女の一瞬の表情を逃さない技は彼独特だ。

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洋服なども薄く着色したバージョンもあっていい感じだった。

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渋谷、原宿のファッションやカルチャーを撮り続ける。

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大胆に塗りつぶされたヌードの女性。独特な作品になっている。

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作品は結構な数が売れていてほぼ完売という人気ぶりだった。

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掛け軸に作品をあしらった連作は案外にもミスマッチ感がない。

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キャンバスに写真を貼って着色した沢山の小さな作品群。

レジャーシートをひろげるムジュン

3年ぶりの個展

76日まで天王洲のTERRADA Art Complexの児玉画廊にて佐藤克久の展覧会「レジャーシートをひろげるムジュン」が開催されている。2016年以来およそ3年ぶりの個展となるそうだが彼の作品は児玉画廊のグループ展などでたまに見かけていた。「絵画とは何か」を問い続けているという作家は絵画を描くということの目的や動機、そしてそれに情熱を燃やす画家とは何かまで問い詰めるように多彩な表現を試みる。一見するといい加減に描いているのかと思うような絵でもよく見ると非常に丹念に描かれていたり沢山の塗り込みを行なっていたり描くという行為に徹底的に固執するような痕跡が見て取れるのだ。今後も自分への問いかけのような自問自答の制作行為は続くのだろうしそうやって生まれる新たな作品を見るのも楽しみな作家だ。

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一見するとふざけた絵なのかと思うがよく見ると凝っている。

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薄く見えるバイバイの文字などもどうやって描いたかわからない。

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時にはこうした立体作品のような絵画作品も手がける。

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連続する作品も色などが計算されているように思う。

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濃く塗っている部分とそうでない部分、境界線など複雑な絵だ。

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水彩のような中央部分の色に厚塗りの絵の具というバランス感がいい。